業夏

無傷では終われないと
気付いていた一年振りの再会
歌舞伎町 二十二時
「俺たちってイカれてるね」

性懲りも無く同じことを
繰り返す確信犯の私と
リスクを承知で私に跨るあなた
嗚呼 変わらないな

あの日 ラーメンを食べるよりも
酒の勢いで抱き合うよりも
私 言いたいことがあったのになあ

ああ、

西武線に乗り換える
黄色い車両はエアコンがない
鍵は洗濯機の中
帰る時はドアポストに

昨日の夜 またあなたの
夢を見たから 聞いてやったよ
「私のことなんて忘れたの?」
「………」
あなたは答えない

あの日 ラーメンを食べるよりも
酒の勢いで抱き合うよりも
私 言いたいことがあったのに
最後だと知っていたのに


あの日 何度も言葉を飲み込んだ
背中を向けてこっそりと泣いた
この歌があなたに届くといいなあ

…嘘だよ 聴かないで

あの日 ラーメンを食べるよりも
酒の勢いで抱き合うよりも
私 言いたいことがあったけど
もう二度と言えなくていい

去年の夏も一昨年の夏も
その前の前の夏もあなたがいた
だけど今度こそ終わり
本当の終わり
あなたへの歌はこれが最後

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