ひとり

まるでわたしを知っているかのように
笑いかけるあなたに唾を吐いた
今日までどれほど 裏切りと痛みを
背負ってきたのか知らない癖に

「ひとりじゃない」という言葉が嫌いだ
わたしはひとりで生まれて ひとりで死ぬのだ
あなたが笑いかける裏には
どうせ汚い理由があるのだろう

まるで自分に起きたことかのように
腹を立てるあなたを訝しんだ
まさかあなたも 同じ傷を抱え
それでも誰かを信じようとするの

「ひとりじゃない」と謳われる度に
孤独が深まる気がして 耳を塞ぐけど
あなたが大事に紡ぐ思いを
疑う程にあなたを傷つけるだろう

遮った声の中に 必要な答えもあったかもな
振り払った手の中に 本物の愛もあったかもな
そうと知りながら無我夢中で
自分を守る術さえ知らず生きてきた
たったひとりで
そう、今日までは

あなたが優しく触れるせいで
あなたが笑いかけるせいで
わたしのために涙を流すせいで
二度とわたしは戻れない
たったひとりには

二度とわたしは戻れない
たったひとりには